【GSX1100Sカタナ】 ある日の夕刻、とある産業道路上で。 私はいつものように少しスピードを上げて流していた。ゆっくりめのスピードで流していたGSX1100Sを追い抜いた、というより抜いてしまった。スピード差は40キロくらいか。そーら、追いかけてきた。おそらくこちらがハヤブサかZZ-R1400ならそんな行為に出るまいに・・・ 向こうが加速する素振りを見せる前にこちらは4速までシフトダウンしていた。当然、スロットルは全開である。メーターが170から180に上がるくらいの時に、もう諦めている事を期待しつつ後方を確認する。諦めてないんだなこれが。それどころか背後にいる。 ここは高速道路ではない。大型車に引っかき回され路面のコンディションは非常に悪い産業道路なのだ。メーターはとっくに180を突き抜けているがまだ追走してくる。が、こちらを抜く気配はない。昔、750Sに乗ってるのでよく知っている。こちらもそうだが、向こうも口から心臓が飛び出すくらい恐ろしいのだ。 その1100Sは集合管以外はノーマルに見えるので、こちらより更なる恐怖と闘っている可能性が高い。大した奴だ。 お互いに普段、仲間内から借りて乗っているハヤブサやスーパーブラックバードのような優れた高速安定性を誇る単車とはモノが違い過ぎるのだ。 もう止めてくれ・・・ そう思っていると、そこは一般道なので信号が見えてきた。おのずと終了である。 脇のコンビニに寄ることにした。そしたら後ろから排気音、あらら、ついてきちゃったよ・・・ 相手がヘルメットを脱いだ時は驚いた。まだ若いのだ。カタナ=おっさんという先入観は裏切られましたな。そして、その青年と少し話しこむ事となった。 その歳でなぜカタナを買った?−単純にカッコいいと思ったらしい。 なぜ執拗に追走してきた?−抜かれた瞬間にこちらを1100Sと認識したらしい。同じバイクなら!と思ったらしい。 さっきは何キロくらい出てた?−路面が荒れ過ぎてたので、あまりメータ見る余裕は無かったが、210キロくらいだと思う。 昨今の高性能車に興味は無いか?−無い事は無いが、必要だとも思ってはいない。 向こうの質問は大体こんな感じだった・・・ 400Sは普通にこれくらい走るものなのか?−見た目はノーマルだが結構、改造してあると答えておいた。 400Sに拘りがあるのか?−無い。安かっただけ、少々の金と自分の手間隙は湯水のように注ぎ込んであると答えておいた。 カタナには乗り続けるのか?−この400Sがくたばったら、再び単気筒に戻ると思う。もっとも、その時にカタログに空冷単気筒が残っていればだが。 昨今の高性能車に興味は無いか?−少々乱暴な理屈だが、見た目も性能のうちならカタナもまだまだ高性能車だろうと答えておいた。
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